ウェビナー「リモート時代の新入社員オンボーディング」開催レポート | HR Leaders NEXT

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日本能率協会が全国の経営者を対象として、毎年実施している経営課題調査において、「人材の強化」の重視度の高まりが見られています。コロナ禍を乗り越えた後の成長軌道を描くためにも、また、DXをはじめとした事業変革を実行していくためにも、あらためて、人材を強化していくことが不可欠であると認識されているようです。

それでは、持続的に価値を生み出す経営を実現するために、「人材の強化」に資する人材戦略をいかにして実行できるのでしょうか。今年度の経営課題調査では、そのカギを探るために、「これからの時代の人材戦略」を特集テーマとして取り上げて、分析を行いました。

具体的には、人材戦略の成果状況に関する設問をもとに、回答企業を高位群・中位群・低位群にグループ分けをし、そのうえで、人材戦略の成果を高めるために必要と思われる要素についての取組状況等を尋ね、それらの分析を通じて、人材戦略の成果を出している企業の特長を探りました。

結論を述べると、今回の調査において仮説として設定した、①経営戦略と人材戦略を連動させること、②自律的な成長や学習を重視する組織風土を醸成すること、③人を活かす組織を実現するための人事施策を実行すること、そして、④経営に貢献する人事部門体制を構築することの4つの要素の全てにおいて、人材戦略の成果状況における高位群の方が、「当てはまる」傾向が強いということを確かめることができました。

さらに、興味深いのは、特に、4番目の「人事部門体制の構築」がカギとなっていることです。上記の仮説に関する回答結果を共分散構造分析という方法で読み解いた結果、4つの要素が相互に関わり合いながら人材戦略の成果につながっているなか、「人事部門体制を構築すること」が出発点となっているということが見い出せたのです。

この「経営に貢献する人事部門体制の構築」の要素については、関連する9つの設問を尋ねていますが、人材戦略の成果における高位群と低位群で、当てはまる傾向の差異が特に大きかった項目は、以下の3つでした。

第1位:人事スタッフの能力要件が明確になっており、育成する仕組みが整っている

第2位:人事部門責任者は、人事部門としてのビジョンを打ち出し、スタッフへの期待を明確にしている

第3位:人事部門の組織体制・要員は十分に整っている

【図表】人材戦略の成果を高めるためのモデル(共分散構造分析の結果)

人材力の強化は、産業界の中でも「人的資本経営」という言葉で注目を集めています。2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンスコード」は、人的資本投資について、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ、分かりやすく具体的に情報を開示・提供することを求めています(補充原則3-1③)。

また、経済産業省は2020年9月に、いわゆる「人材版伊藤レポート」発表。その後の「人的資本経営の実現に向けた検討会」より2022年1月に公表されている「取りまとめ骨子(案)」では、「人的資本経営を最重要の経営課題・取締役会の議題の一つとし、経営戦略に連動する動的な人材ポートフォリオ計画を策定・運用することが欠かせない」として、CHROの設置、全社的経営課題の抽出、改善KPIの公開、人事部門から事業部門への人事権限の委譲、人事部のケイパビリティ向上などの取り組みの必要性が指摘されています。

人的資本経営を進めていくためには、経営戦略と人材戦略を連動させ、必要な施策を着実に実行していくことが求められるわけですが、そのためにも、そうした人材戦略を策定し、実行する人事部門体制をつくることが重要であり、人事スタッフ自体を育成していくことがカギとなっているということになります。

※日本能率協会 経営課題調査の詳細については、下記のウェブサイトに掲載している『2021年度 第42回 当面する企業経営課題に関する調査報告書』をご参照ください。

https://www.jma.or.jp/activity/report.html

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