HR Leaders NEXTカンファレンス

2019 HR Leaders NEXTカンファレンスレポート 「ファイザーのグローバルビジネスを支える人事」

2019 HR Leaders NEXTカンファレンス A4セッション
~人事機能(COE,BP,OP)が連携して人事部門が提供する価値を上げるためには~

「ファイザーのグローバルビジネスを支える人事」
山﨑泰一氏 ファイザー・ホールディングス 労政グループ 部長、シニアビジネスパートナー


COE(Center of Expertise)、ビジネスパートナー、人事オペレーションの各人事機能が連携し、ビジネスに対する提供価値の最大化に挑戦しているファイザー。グローバル組織におけるHRのミッションと取り組みを紐解きます。

「HRの各機能とその連携」

ファイザーは1849年にアメリカで創業し、日本法人設立は1953年。グローバルでの従業員が約9万人、国内の従業員数が5,000名弱の医療用医薬品製造・販売企業です。グローバルHRにおいては、事業部門に寄り添うHRBP、採用・労政・処遇などのCOE、そして人事オペレーションの3つが機能し、グローバル・ファイザーのCOEによって統一された人事ポリシーを、各地域のCOEとビジネスパートナーがそれぞれの地域とビジネスに応じて運用する、グローカルな体制となっています。日本法人においては、人事スタッフがCOE機能と、各事業部の主に本部長・部長クラスをサポートするHRBP、そしてHRオペレーションとに分かれ、場合によっては兼任をしながら、それぞれの役割を果たしています。

ファイザーにおけるHRへの期待は、従来の人事管理からビジネスへの価値提供へと変化しています。まずHRBPのミッションは、人財マネジメントや組織開発だけでなく、社員のもつ潜在能力を最大化しながら組織の健全さと効果性を高め、組織を強くすることで会社の持続的な成長に貢献することにあります。人事に対しては、制度企画部署と協働して組織を強化し、社員の成長を促す人事制度の立案・運用に寄与することです。一方、会社に対しては、ビジネスパートナーとして人と情報をつなぐ機能を積極的に発揮することで、国内部門間とグローバルとの連携を強化しシナジーを高めることにあります。

COEに求められるのは、企業を持続的に成長させる人・組織・カルチャーをつくり出し、ビジネスを支援する仕組みをつくり、それを運用することです。そして専門知識と能力を提供してHRBPを支援することにあります。

人事オペレーションは、業務をシンプルにして生産を高めるという大きなミッションを持っています。人事のために人事業務を効率化するのではなく、あくまでも社員に負荷をかけないための人事オペレーションを目指しています。その実現のためには、少人数化、デジタル・システム化を進める必要があります。

ファイザーは企業目的として「患者さんの生活を大きく変えるブレークスルーを生みだす」ことを掲げています。その実現のために、HRとしては社員の潜在能力を解き放ち、職場を「アメージングワークプレイス」へと変化させることに注力しています。そのプロセスではHRBPが基点となって事業の目標達成に貢献していき、そこにCOEが専門的な支援を施しています。一方でCOEが立案した制度については、HRBPがその制度を現場で活かすためのフィードバックを行うことによって、制度立案にも関わります。COEは、制度を策定する初期から人事オペレーションも巻き込みます。制度設計ばかりに目が向いてしまうと、運用の段階で人事オペレーションや社員に負担をかけてしまうことになりかねないため、実務的視点を制度構築の早期段階で取り込んでいます。

「将来のビジネスに貢献する」

変化し続けるビジネスの中で、HRが5年後、10年後もビジネスに貢献できるためにはHR自身のレベルアップが必要不可欠です。そのためには、ビジネスのキードライバーを理解して語れるか、自分の言葉で人事戦略を伝えられるか、旬のHRトレンドを知っているだけでなく、それで何を成し遂げたいのかを語れるか、つまり、各制度や施策の本質・目的を追求し、それらが自分の中で腹落ちしているか、が問われるでしょう。プロとして人事の基本的知識だけでなく脳科学、心理学、デジタル領域の学びも必要になってきています。そして何よりも重要なのがアジリティです。正解のない時代だからこそ、まずスピード感をもって着手してみることが大切です。その際、完璧さを求めず70点で走る勇気をもつことを心掛けるべきでしょう。成功体験を過去のものとして常識を疑ってみる意識や、変わることを恐れない姿勢も欠かせません。

ファイザーではHRのレベルアップのため、具体的に次のことに取り組んでいます。まずビジネスの理解と貢献です。HRBPは各事業本部のリーダーシップチームの1人として、ビジネスレビューミーティングやキックオフミーティングに参加しています。
一方、ビジネスからHRへの出向受入も行っています。目の前に現場の課題を認識している「社内顧客」がいるだけで、HRの視点が変わるという効果を生み出しています。また、現場から出向してきた本人にとっても、現場にいては分からなかったHRの施策の真の目的を知り、現場とHRのアンバサダー役になろうというモチベーションを得る機会となっています。
外部からの刺激も重要です。ファイザーでは社会やテクノロジーの変化やHRトレンドを把握するため、外部の勉強会に参加し、そこで得たものを社内にもち帰って語り、共有する取り組みを行っています。語ることによって、自分が学んできたことを自身の中に定着させることができます。また、それを題材に社内で議論することによって、外部から得た理論を社内のコンテクストに落として、実践に繋げることができるのです。
またHRの中でもストレッチアサインメントを実施しています。昨今はプレイングマネジャーの増加によって、シニアマネジャー・ダイレクタークラスでもハンズオンで業務を抱える傾向にあります。少し難しい課題であっても部下に積極的に移譲して、マネジャー自身は一つ上のレベルの課題に取り組むことで、マネジャー本人と若手育成を加速させています。そして、上司・部下の対話も重要だと考えています。部下との1on1ミーティングを、HRも含めて全社的に行っています。どれだけ実施回数を増やしても、目の前のビジネスやアクションばかりについて話をしていると社員の成長に繋がらないため、2-3回に1回は、部下のキャリアと育成について話をするようにしています。

「日本のHRの姿」

ファイザーのグローバルビジネスにおいて、日本のHRはどうあるべきでしょうか。
たとえば、日本企業の人事であれば、グローバルHRメンバーの中に入ったときによく話を聞いてもらうことができます。一方で、グローバルカンパニーにおいて、HRメンバーのなかに日本人が1人入った場合は発言の機会を確保するだけでも難しいのが現実です。決して言語の問題ではなく、グローバルカンパニーの中では本社の看板なしに自分自身の存在感を出し、議論をリードする能力が求められます。バックグラウンドが異なる相手に対して伝えることができるロジックを持つことも大事ですが、何よりもHRとして何かを成し遂げたいという「志」や「本気」が問われています。そしてそれを語るだけでなく、実行することが重要です。それによって周りの人を巻き込んでいく経験を重ねながら、勘所を掴んでいくことができるようになります。そうした場数だけではなく、学習という点でも、共通言語としてのHR理論、他業界・他分野に亘る様々な視点も身につけることが必要です。この場数と学習のサイクルを幾度も回すことによって、自分の引き出しを増やし、グローバルで戦えるHRに成長できると考えています。

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