HR Leaders NEXTカンファレンス

2019 HR Leaders NEXTカンファレンスレポート 「AGCにおけるコーポレートHRとカンパニーHRの協働」

2019 HR Leaders NEXTカンファレンス A4セッション

~人事機能(COE,BP,OP)が連携して、人事部門が提供する価値を上げるために~

 

 「AGCにおけるコーポレートHRとカンパニーHRの協働」

吉岡大雅氏 AGC株式会社 人事部 人財開発グループ 企画チームリーダー

カンパニー制の下、グローバルに事業を展開しているAGCグループでは、グループ全体をまとめる人事機能が必要である一方、事業や地域によって異なる人財マネジメントの需要があります。3つの人事機能を中心にAGCグループにおける人事機能連携の姿を解説します。

AGCグループは2002年に、ガラス、電子、化学品、セラミクスその他の4つのカンパニー制を導入し、以降、各カンパニーに人事を配置してHRBPを運用しています。海外展開においては、日本とアジア、ヨーロッパ、アメリカの3極体制をベースに、30を超える国と地域、約200の拠点でビジネスを行っています。現在、海外売上高比率は約7割に上っており、国内需要が伸び悩む中、海外展開を加速しています。このような事業と地域のマトリックス組織に伴って、AGCグループの人事機能は大きく3つに分かれています。

1つ目がコーポレートHRです。グループ全体の「人事部長」のポジションにあたるグローバルHRリーダーのもとに束ねられています。まず、COEが、グループ・グローバル戦略に基づいた共通の施策推進や制度基盤の構築、エンゲージメントサーベイ等を担っています。またAGC単体の人事オペレーションもここに包含されています。また、コーポレートHRに紐づいて、カントリー/リージョンHRが、中国(上海)・シンガポール・タイ・アメリカ・ベルギーに配置されています。各リージョンにおけるヘッドクォーター機能の一部をもち、各国に展開している事業を横断的に見ながら各国固有の法制度などへの対応や、現地の大学とリレーションを構築しての人財確保などを行っています。レポート先はグローバルHRリーダーになります。ただし、すべての事業に対して各カントリー/リージョンHRが存在するわけではなく、それぞれの事業の歴史やグローバル展開度合に応じて異なります。AGCグループではここまでを総称してコーポレートHRと呼びます。

2つ目が各拠点HRです。国内外の工場やグループ会社の人事関連業務に携わっており、特に東南アジアや中国など従業員数が多い拠点に日本から人事担当者を直接派遣して、連携を取りながら拠点マネジメントを行っています。

3つ目が各カンパニーに配置されているカンパニーHR、いわゆるHRBPで、カンパニーの事業戦略に基づく人員計画や配置、業績評価や教育などの人財マネジメントなどを行っています。日本にいるカンパニーHRがそれぞれの拠点の現地HR担当者に働きかけていくことで運営されていますが、各事業の成長ステージによって求められる機能が異なるのが特徴です。たとえばグローバル展開を始めて間もない事業、もしくは成長段階にある事業であれば人財の獲得を全面的に支援します。あるいは近年はM&Aに際して、デューデリジェンス、買収後の人財の定着やキーパーソンの獲得でも大きな役割を果たしています。逆に海外進出してから長い時間が経って現地化が進んできているカンパニーのHRであれば、人事オペレーションは現場に任せ、事業の選択や集中といった経営的に重要な局面での戦略的支援が求められています。

以上をまとめると、グループ全体の人事戦略を考えるのがコーポレートHR、カンパニーHRとカントリー/リージョンHRはそれぞれ、事業の戦略、あるいは地域の事業に応じて人事施策を展開します。さらにカンパニーHRは各拠点HRに対し、カンパニーの人事施策を展開します。一方、人事オペレーションについては、HRBPが極力オペレーションに時間を割くことがないように、コーポレートHRが可能な限り支援する態勢を整えています。COEとHRBPの関係性において、COEは常に専門的知識をもってHRBPを支える立場であると認識しています。

コーポレートHRとカンパニーHRの協働にあたっては、AGCグループのキャリアパスのあり方もキーになっています。AGCはいわゆる部門別採用であり、各人が「所管部門」と「所属部門」という2つの背番号を持っています。「所管部門」は配置・育成の責任を持ちます。一方で「所属部門」は利益・所属機能の目標達成の責任を持ちます。つまり、「所管部門」は本籍、「所属部門」は住民票というイメージです。この体制では長期的視点での人財育成が可能で、誰かが必ず自分の成長を見てくれているという安心感を醸成することもできます。デメリットとしては、各部門で人財の抱え込みが生じやすいことです。結果的に社内の人財流動化が進まず、優秀人財を十分に活用しきれていない可能性もあります。社内では、自ら手を挙げる人財公募制度やチャレンジキャリア制度はありますが、これらの制度を更に活用し、活性化させていくことが課題と言えます。

カンパニーHRの役割は事業の理解なしでは担うことはできません。人事部門内のローテーションでは、どうしでも人事関連業務の知識や経験に偏ってしまう傾向があります。カンパニーHRを育成していくには、事業部門の従業員を知り、そして事業理解を深めていくことが最大の課題になります。また、カンパニーHRは事業部門の立場であるため、時としてコーポレートHRとの間で互いの主張が異なることもありますが、定期的に情報共有の場を設け、事業の状況や人事施策について意見交換をしておくことが解決の近道になります。「所属部門」は違っても、同じ人事部員としてお互いの立場を理解していることが大切です。

横の連携を図るもう1つの取組みとして、グループ全体で所属を超えて職種に必要なスキルや知識を共に高めあう活動であるCNA(Cross-divisional Network Activity=部門横断的ネットワーク活動)があります。CNAのベースとなるのがスキルマップです。スキルマップとは、グローバルベースでどの地域にどのスキルを持ったメンバーがどれだけいるのかをマッピングしたものです。スキルマップに登録できるスキルは約40種類、人事評価の際に自己申告によってスキルを3つまで登録します。CNAではスキルマップに登録したメンバーが部門や国境を超えて集まり、日本のみならず海外においても新たな知見の獲得や発見につなげています。人事部門にとってのCNAの大きなメリットは、特に海外拠点にいる現地HRとの協働や、さまざまな拠点のHRとの結びつきが可能になり、人事スキルをもつ人財の横のつながりができることです。これによってグループ視点での問題解決が実現できると期待しています。

 

 

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