HR Leaders NEXTアドバイザリーボードとのディスカッション 新しい時代の人事を考える | HR Leaders NEXT
HR Leaders NEXTアドバイザリーボードとのディスカッション 新しい時代の人事を考える
HR Leaders NEXTカンファレンス A2セッションでは、HR Leaders NEXT活動の方向性や内容を検討する「HR Leaders NEXTアドバイザリーボード」メンバーによるパネル討議を実施しました。「新しい時代の人事を考える」をテーマに、経営のパートナーであり続ける人事として考えておかなければならない3つの論点を取り上げました。
≪パネリスト(会社名五十音順)≫
カゴメ株式会社 常務執行役員CHO(人事最高責任者)有沢 正人 様
サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長 中根 弓佳 様
豊田通商株式会社 CHRO、CSO 補佐 濱瀬 牧子 様
ロート製薬株式会社 取締役、人財・Well-being経営推進本部長 髙倉 千春 様
≪ファシリテータ≫
学習院大学 経済学部 教授 守島 基博 様
論点1 持続的な企業価値向上に貢献する人事
① 将来のステークホルダーになる若年層との関り方
現代の10~20代はデジタルネイティブであると同時に、SGDsネイティブ。社会課題に取り組もうとする姿勢が顕著であり、未来への感度が高い。ゆえに、この世代の人材採用においては、社会課題に対応した経営方針や事業活動を明確にして企業の採用ブランドを高めていく必要がある。
② 投資家への対応
投資家は、経営理念自体が会社のブランドになっているか、そのブランドを体現できる人材が発掘・育成されているかを見ている。理念に立脚した人材マネジメントができているかどうかが問われている。
③ 社員の幸せの追求
誰かのために働きたい、貢献したいという想いや、自社の事業を通して社会を良くしたいという信念が実現できれば、人々は幸せを感じることができる。それに対する共感をより多く集めていくことによって、結果的に企業価値が高まり、持続的社会の実現にも繋がる。
④ 経営理念の実践
経営理念を事業の中で実践するためのストーリーを、一人ひとりが自分事化できるように働きかける。コロナ禍でリモートワークが定常化する中では、経営理念が組織の求心力になり得る。経営理念に立ち返り、事業を通して何を実現するべきなのかをいま一度確認し、組織としての一体感を醸成することができる。
論点2 自律した人材の育成
① HRBPの役割
人事は、様々な制度・施策(副業やスーパーフレックス等)を通して、自律的に学びたい・成長したい・キャリアを築きたい社員に時間や機会を提供できる。そうした制度が現場で効果的に運用されているかを確認できる機能としてHRBPがある。HRBPは現場の人々が自身のキャリアを自発的に考えることを促す役割を担える。
② 従業員満足からエンゲージメントへ
従業員満足度調査は会社が提供する給与や制度等に対する満足度を確認するツールである一方、エンゲージメントサーベイは、心理的安全性の担保も含め、その会社で働くこと、その職務に従事することへの充足度を確認している。サーベイで診断する対象が、会社が与えてくれることへの満足度から、会社への忠誠心へと変わり、そして雇用主と従業員が対等な立場になってきている今、従業員が個人としてやりたいことをそこでどれだけ実現できているかどうか、あるいはそれが自分の生きがいに繋がっているのかどうか、へと変化している。ゆえに、エンゲージメントは社員の自律度合を知るための1つの指標になり得る。
③ トラストの醸成
エンゲージメントに加えてトラストも必要。なぜその会社で働くのかを考えた時に、信頼できる仲間がいて、そこに自分がいる意味があってこそ、幸せ、やりがい、そして自分の人生の大半をその組織で使っていく意義を見出すことができる。トラストがあれば、オープンに物事がいえる状況が生まれる。それがダイバーシティ&インクルージョンや、新しい事業が生まれやすい組織風土にも繋がる。
④ 「やりたいこと」を明確にする個と、それに応える企業
一人ひとりがやりたいことに挑戦できる場を提供することが企業の責任である一方、個人の責任として、「自分が何をやりたいのか」を明確に持っておかなければならない。この会社にいたら何か幸せになれるんじゃないかと、会社に漠然と自身のキャリアを預ける時代ではなくなった。各社員がそれぞれにやりたいことを持っているからこそ、多様な個人を活かすこともできる。「やりたいこと」の明確化は個人あるいは社内だけの問題でない。組織の壁を越えた協働が推進される中では、外からも「この会社は何がやりたいのか」が問われている。ゆえに、組織としての理念が今一度、重要視される。
 論点3 これからの人事のあるべき姿・役割(総括)
① 権威の象徴からイノベーションの象徴へ
人事戦略が経営戦略の中でコアであることを経営トップに理解してもらう必要がある。各ファンクションにそれぞれの戦略があるが、それを実現するためには人材を準備しなければならないことから、人事戦略は経営の根幹である。経営の理解を得つつ、一方、従業員からは、一番イノベーティブな存在であると認識されるようになりたい。マーケティングでいうところの‟お客様の期待を超える”のと同じように、「こんなことまで人事は考えているのか、やるのか」と従業員に思われるようになれば、権威の象徴だった人事が、イノベーティブの象徴へと変わっていく。
② 情報をオープンにし、従業員を巻き込む
人事制度・施策の策定や実施において人事は最終的に意思決定をするものの、情報を公開し透明性を高めることによって、いろいろな人の意見を巻き込むことができる。その中で人事がなかなか変われないと言われる要因の1つであるリスクへの配慮についても、人事の考えを従業員にオープンにすれば、そのリスクを従業員側も納得し、共に負いながら前に進むことができる。それができたときの人事は強い。
③ 人事のリーダーシップ
従業員に対して、ある程度の方向性を示し、場を提供することはできるが、あくまでも解は現場にある。従業員をEmpowerment(力を与える)するということではなくて、一人ひとりに内在しているものを引き出すリーダーシップが求められている。そのために、偶発的に機会を用意したり、組織文化を良くしていくための仕掛けを創ったりして、社員一人ひとりが自発的に自身のキャリアや役割を考えられるように背中を押すのが、これからの人事のあるべき姿である。
④ 人事の体制作りとコンピテンシー
半歩先くらいを見て事業部とコミュニケーションをしてこそ人事の価値が発揮できる。そのための1つの策として、人事のチームメンバーを、人事生え抜きだけではなく、事業部の経験者も含めて構成することによって、経営・事業の先を読める人事になれる。一方、人事パーソン一人ひとりに求められるコンピテンシーもある。好奇心と洞察力。これだけ世の中が変わる中で、社会への感度を高めて、経営・社会・働く人々の要請に応えていくことが日々期待されている。
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