違いを力に! ~コニカミノルタのイノベーション創出につながる人財力強化
違いを力に!
~コニカミノルタのイノベーション創出につながる人財力強化
臼井 強 氏
コニカミノルタ株式会社 人事部 企画労政グループリーダー
兼 違いを力に!推進室

【会社が変わるために】

コニカミノルタは、100年以上の歴史をもつ製造業2社をルーツとする会社です。かつて主力だったカメラ・フィルム事業は、2006年に撤退し、現在では売り上げ1兆円のうち8割を複合機、デジタル印刷機が占めています。また海外事業はヨーロッパを中心に早い段階から進出しており、海外売上比率は全体の8割になっています。

グローバル競争を勝ち抜くために現在会社が目指しているのは、「B to B to P for P」のビジネスです。例えばエンドユーザー(P)である高齢者のクオリティ オブ ライフ を上げていくために、介護士(P)の働き方を変えていくことに注力するといったように、人間社会の課題を解決するビジネスへとシフトしています。新たな価値を提供できる社会課題解決型企業に生まれ変わることを中期経営計画「SHINKA2019」と表して改革を進めています。

こうした経営戦略を実行するのはあくまでも人です。一人ひとりが持ち味を発揮して、個が輝いたときに、企業の持続的成長に向けてこの戦略が実行できるものだと考えています。そのために人事は何をするのか?ということを経営から問われています。我々は伝統的な製造業の人事で、これまでは、1つの人事施策を実行するにも慎重に判断し、行動していました。そうした人事を変えなければならないという強い思いを持っています。

まず人事として着手しているのが、人材育成とワークスタイル変革です。例えば、自己啓発に会社が上限150万円まで支援する制度や、若手に対する人材投資として3年間で180名を海外に派遣する制度を導入しています。ワークスタイル変革としては、リモートワークや服装の自由化を始めました。イノベーションの創出には組織風土も大切です。そのために人事評価に新たに導入したのが、通常の評価に加えて、報いる・褒める・広めるというコンセプトをもとに、各役員が「組織に広めたい」と見なした部下のチャレンジ行動(成果ではない)を評価する制度です。何を評価するのか、どれくらい加点をするのかについては、人事の規定にはなく、あくまでも役員の裁量です。そのため、当初は現場から「どう運用したらよいのか」という戸惑いの声もありましたが、やってみると、各役員が真剣にと考え、人材のチャレンジをしっかりと評価してくれました。

【ダイバーシティによるイノベーションの創出 ~副業・兼業/ジョブリターン制度が生み出す経験の多様性】

個が輝くために、私たちが最も重視しているのが、「ダイバーシティ」です。同じような属性の人が集まった会議では、全員がひとつの意見に同調してしまいがちです。メンバーの属性が多様になると、「なぜ?」という意見が多くなり会議が活性化します。同質化した集団からはなかなか新しい発想は生まれません。議論の中で健全な火花を散らして、そこから出てきたアイデアを組織としてのイノベーションに繋げていくことが大切ですが、実際のところそうした仕掛けが組織の中であるかどうかが問題でした。そこでダイバーシティを推進するために、地道な啓蒙活動、ワークショップ、社内調査、制度・仕組みなど様々なアプローチを組み合わせています。

制度・仕組みの一環として実施しているのが「ジョブリターン制度」「副業・兼業の解禁」です。 「ジョブリターン制度」とは、育児・介護・配偶者転勤帯同などの理由で退職した社員は退職5年以内であれば応募可能、転職・留学などキャリアアップのため退職した社員は期限の定めなく応募が可能という制度です。社外での経験を活かし、再び貢献してもらうことを目的としています。復職を志す方へのプレミアムとして、リターン後の勤続年数を退職前と通算します。2017年12月のスタートですから、利用者はまだ数名です。ただ一般職からIT系の会社に転職し、2年後に管理職として再び採用されたというケースもあり、社外での経験を通じて成長して戻ってきてくれたことを喜ばしく感じております。

「副業・兼業の解禁」も、ダイバーシティ促進のためジョブリターン制度と同時にスタートしました。これは➀何をやるのか、②動機、③兼業・副業を通じてコニカミノルタにどのような貢献ができるか、を本人が明確にして人事部長に申請し、認められれば会社から、ある意味「お墨付きを得られる」という仕組みです。就業規則を変えたわけではありません。特に重視しているのが「その仕事を通じてコニカミノルタにどんな貢献ができるか」です。CSRの一環で副業・兼業を認めているわけではなく、あくまでも副業・兼業で得られた経験がイノベーションの起点になってくれることを期待しています。ここまでの実績としては、デザインセンターの社員が、自身の人的ネットワークを活かして地方の中小企業のデザインコンサルティングを始めたり、当社に勤務している看護職の方が、社内で活躍する女性社員の勤続年数が延びることに備え、もっと女性特有の課題への新しい知見を得たいという想いから、週一回婦人科の医院に勤務して臨床経験を積んでいます。経験豊富なあるシニア社員の方は、「中小の独立行政法人のアドバイザーになったので、自分なりのチャネルをつくり会社に還元したい」と副業をスタートしました。

「副業・兼業制度」の導入にあたっては、実質2カ月くらいの検討期間の中で、他社事例も含めて研究をしたのちに、2017年11月に経営会議にかけ、その1か月後には社内にスタート宣言をしています。経営会議では利益相反や人材流出への懸念や、一般的な事務職には無縁な話では、といった意見もありました。しかし、当社がグローバルで戦うために、イノベーションを起こすためには何でもやってみようという思いが勝りました。イノベーション創出の手段としてダイバーシティがあり、性別・国籍といった表出した多様性だけでなく、価値観や経験といった内なる多様性を組織の中で深めるために副業・兼業は有効との判断で、実施に至りました。リスクがあることも認識していましたが、それをやらない理由にするのではなくて、最小限にして、グローバル競争の中で生き残るために挑戦することを選択したのです。

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