日本ユニシスグループのエンゲージメント経営

2020年11月10日(火)に開催された HR Leaders NEXTカンファレンス A3セッションでは、日本ユニシスグループのエンゲージメント経営への取組みが紹介されました。システムインテグレータから、ビジネスエコシステムの中核となって社会課題を解決する企業になることを目指している同社は、「会社・組織」と「社員」の信頼関係(エンゲージメント)をベースとした組織風土の変革に取り組んでいます。

≪スピーカー≫ 白井 久美子 様 日本ユニシス株式会社 執行役員 人事部長

ビジネスモデル・風土改革とエンゲージメント
激変の真っ只中にあるIT業界において、日本ユニシスグループも従来のシステムインテグレータとしてのビジネスモデルの変革に迫られ、組織が蓄積してきた強みを生かしながら、お客様・パートナーとともに、社会課題解決に取り組むプラットフォーム提供企業へと進化しています。システムインテグレーション業務では、お客様の要望に合わせた仕様に基づき、間違いなく確実にシステムを構築して納品することが重要ですが、社会課題解決に向けて新しい価値を生み出していくことが求められるようになった今、これまで培われた強みを活かしながら新しいサービスをデザインし実現する力が求められています。そのため、色々なことにチャレンジし、失敗が許容される組織風土の醸成に取組んでいます。

組織風土改革に取り組んできた結果として、実際に新たな事業も生まれてきています。たとえば「MY HOME MARKET®」です。従来住宅展示場で長時間かけて見学・相談していたことが、モバイル上で、VRを使って住宅を探し、間取りや内装のカスタマイズをし、見積までできるようになりました。「家を買う人に満足感を与える新しいユーザー体験」が評価されて2019年にはグッドデザイン賞を受賞しています。

日本ユニシスグループでは、風土改革を、ただ風土が良くなったり、社員が心地よさを感じられるような組織になることではなく、企業業績が上がり、ポジティブな回転を社員と組織の双方にもたらし、組織能力が変革していくことと捉えています。また、風土改革の進捗度合いを測る主要指標として、全社員を対象としたエンゲージメント・サーベイのスコアをモニタリングしています。「会社・組織」と「社員」の信頼関係(エンゲージメント)の構築よって、組織内でコミュニケーション・相互理解や理念・戦略に向けた議論が生まれ、新しい取り組みや高い目標達成に向けた行動が促されることで、パフォーマンス・業績の向上や更なる強固なエンゲージメント構築につながる、という循環があると考えるためです。

風土改革における主要施策
風土改革は主に、「戦略人事改革」「働き方改革」「組織・人財改革」「ダイバーシティ推進」「業務プロセス・制度改革」の5つの柱から構成されています。これらの柱に基づく人事の活動の前提として、トップマネジメントからのメッセージも重要になっています。経営者が「業績を向上させる、イノベーションを生み出す、そのために風土改革が必要不可欠」ということを事あるごとに発信しています。

代表的な施策を紹介しますと、まず、「イントラパーソナル・ダイバーシティとROLES」という取組みがあります。ダイバーシティというと、とかく組織の中で多様な人を受容・活用していくことと捉えられがちですが、当社グループでは「個」の中にあるダイバーシティに着目しています。個人の中で経験やスキルが多様化してくことによって、社外パートナーや顧客など様々なステークホルダーとの繋がりが多く派生し、イノベーションが生まれやすくなると考えています。人事としては社員が、現職場における自分だけではなく、多様な自己の発揮に向かって自分磨きをすることを後押ししています。また、組織の中で様々な役割を担うことも推奨しており、大きなプロジェクトの中に含まれる多種多様な役割を、くまなく担うことができるような人財の育成に繋げています。

イノベーションの促進という点においては、「自律的なチャレンジを喚起する場づくり」ということで、新規ビジネス創出の場づくり、改善活動、アイデアコンテストなど様々な取組みがあります。1つの例として「Morning Challenge」があります。始業時間前に開催される会合で、新たな取組みをしているプロジェクトの事例や海外からの最新情報等を共有したり議論したりしています。部門や役職に関係なく誰でも参加することができ、リモート下でオンライン実施になってからは、参加者が数百名に上るような場へと進化しています。

エンゲージメント経営
「会社・組織」と「社員」の信頼関係(エンゲージメント)の構築においては、会社の理念・戦略を社員ひとり一人が自らの業務に結び付けて考え、納得・腹落ちして行動を起こすことが必要不可欠です。これまでの組織風土の中では、上から降りてきた指示を正しく実行することが求められていましたが、社会課題に対応して新しい価値を生み出していくビジネスモデルの中では、社員一人ひとりの主体的な振る舞いが重要になっています。昨今のリモートワークの中では特に、個の存在(それぞれが会社にとってどのような存在なのか)が意識されるようなってきており、「個の発揮」「組織との関わり」「会社への貢献」について各々が自発的に考えられるように、上記の風土改革を進める様々な人事施策の中で支援しています。

エンゲージメントを軸にした経営には、現場の組織長にも大きな役割があります。それを支援する場として各部門の組織長を対象に、「エンゲージメント・ワークショップ」を実施しています。自分たちのアクションがエンゲージメントにどのように影響を与えているかについて、エンゲージメント・サーベイの結果をもとに分析し、その結果を部門としての次の行動にどのように繋げていくかを表明するようにしています。また、組織長は日々のマネジメントにコーチングを活用するようにもなりました。システムインテグレーション事業を推進する中では、メンバーの業務の欠陥を見つけてその修正を図るようなマネジメント慣行がありました。一方、社員一人ひとりが、顧客やパートナーと協働して新しい価値を生み出していく今のビジネスでは、組織メンバーの強みに着目し、それを活かしていくマネジメントが求められています。組織長がコーチングの技術を身に付けることによって、上司が部下を支援するコミュニケーションが生まれるようになり、チャレンジする組織風土の醸成に寄与しています。

様々な手を打った結果としてエンゲージメントが向上していることは、社外に向けても発信しています。たとえば、業績/株価とエンゲージメントスコアの推移においては、エンゲージメントスコアと、株価、売上、ROE、営業利益率が連動して向上していることが分かります。こうした外部のステークホルダーに向けた情報発信を行う理由は、当社グループとして、エンゲージメントを重要な経営資源、つまり、競争優位の源泉と認識し、エンゲージメントスコアは企業価値を示す指標と捉えているためです。それによって市場からの評価が高まり、優秀な人財が確保できるようになれば、更にエンゲージメントが高まるという好循環が確立できると考えています。最近ではエンゲージメント経営・サステナブル経営を更に進めていくために、グループ内に「ソーシャル委員会」を立ち上げ、社会価値・経済価値を同時に高めていくことにグループ全体で取り組んでいます。

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