ウェビナー「リモート時代の新入社員オンボーディング」開催レポート | HR Leaders NEXT

イベントレポ―ト・リサーチ情報

HRBPのビジネス課題へのアプローチ② 組織能力・人的資源の課題特定

第1回のコラムでは経営戦略を構成する3つの要素「産業の状況」「戦略ポジション」「企業活動と組織能力・経営資源」を用いて、「到達すべき将来の状況」を設定する手法をお伝えしました。今回は、同様の手法で現状も分析し、それと将来状況との比較によって、組織・人財課題を特定するプロセスについてご紹介します。

Q:3つの要素を用いて現状分析をすると、現時点でこの3つの要素が連動していないことがわかるかもしれません。「到達すべき将来の状況」を見据えて現状とのギャップを埋めていくのと、現在の3つの要素のアラインメントの確保、どちらを優先すべきか?

福地先生:人間の病気と同じで、今、悪いところがあるならば、まずそこに手を打つべき。3つの要素のうち、どこに手を入れるのかを考えた時に、大企業であれば「産業の状況」を短期間で変えることも可能な場合がある。それがM&Aである。例えば、ドラッグストアチェーンのような業界では、企業の統合によって短期間のうちに業界の構造が大きく変わり、寡占化が進んでいる。

しかしながら、多くの企業にとって「産業の状況」は所与の条件であり、企業の打ち手として一般的なのは、内部にある「企業活動と組織能力・経営資源」の変革である。ただし、この要素に関しては、変革前に一度考えてみていただきたいポイントがある。それは、今ある「組織能力や経営資源」が企業活動に十分に活かしきれているか、ということである。例えば、人財の流出が続いている状態であれば、組織としての能力が蓄積されず、企業としてのサービス・製品の提供に負の影響を与えているかもしれない。この場合は、第1回でご紹介した活動システムの視点を用いて、人的資源を補完するシステムを見直すことによって、狙った「戦略ポジション」を実現する企業活動へと立て直すことができるだろう。

一方、「到達すべき将来の状況」を見据えて、現在とのギャップを埋めていくのは、中期経営計画などで計画・実施されていくものとなるだろう。ただし、全てのケースにおいて、このギャップ対策が必要なわけではない。例えば業界構造の変化が少ない安定的な業界では、これまでどおりの組織能力や経営資源を用いた企業活動が引き続き有効なため、敢えて変革を起こす必要はない。

他方、IT関連の業界のように産業変化が非常に激しい業界や自動車産業のように今後の大きな変化が予測される業界においては、現在の整合性よりも、常に先々の産業の状況に応じて組織能力や人的資源を開発していくことが求められる。その産業の中で儲かるポジションを確保しつづけられるように、迅速に内部資源のアップデートを行なっていく必要があるだろう。

一橋大学商学部准教授福地宏之氏 JMA人事コンソーシム資料より

いずれの場合も、3つの要素に関する現在あるいは(および)将来の整合性を検討してはじめて、その企業・事業が必要とする組織能力や経営資源が特定できる。そして、それらを現有の組織能力や経営資源と比較することによって初めて、組織・人財面の課題も明らかにすることができる。そこから、組織・人材戦略(組織・人材を将来到達すべく状況にするための方針)や具体的施策が生まれてくるのである。

第3回へ続く

Share: