勝つために人事はどんな知識を獲得して、何をすべきか2018 SHRM Annual Conference & Exposition参加レポート
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株式会社ピープルファースト
代表取締役八木 洋介 氏
2018年8月2日
経営者の人材や人事への期待が高まる好機を捉え、人事は経営にもっと積極的に参画し、かつ自らのケーパビリティを上げなければなりません。勝つための人事の具体的なアクションを促すヒントもSHRM大会の各セッションの中には散りばめられていました。
まず、経営環境の変化を読むことです。
デジタル・AIとった最新技術、およびミレニアルを含むマルチジェネレーションの人員構成がどのように経営、組織、人事に影響を与えるのかといったことを先取りして考えていかなければなりません。
特に、このような環境変化の中で、いかにイノベーションを起こしいくのか、という観点での洞察が必要です。
イノベーションを起こすのは、AIではなく、人間です。かつ、人間と人間、そのアイデアとアイデアが交差するところでイノベーションは起こります。ゆえに人間と人間を結びつける、「trust(信頼)」や「purpose(目的)」を組織の中で醸成することが求められます。
また、以前から言われてきたことですが、やはりイノベーションを起こすリーダーを着実に育成していくことも重要なのです。
新たな点としては、人事の中に科学を持ち込もうとする動きです。今回の大会プログラムの中でもDavid Rock氏によるニューロサイエンスに関するふたつのセッションがいずれも満員締切だったことに象徴されるように、ニューロサイエンスを人事にどのように活かすかということに、大きな注目が集まっています。具体的にはモチベーションとパフォーマンスの向上、ダイバーシティ&インクルージョン、そして文化の醸成に寄与するのではないかと考えられています。
EQの研究者として長年活躍してきたDaniel Goleman氏も、リーダーに求められるEQを統計的な優位性で唱えてきたこれまでの研究に脳科学を結びつけて、科学的なアプローチに挑戦しようとしていました。
これまでの研究と新しい見解を結合してなお、Daniel Golemanは以前にも増して、戦略は人が実践するものであり、ゆえに人材・人事の重要性を改めて強調していました。
加えて、Bias(偏見)に対する科学的見地を人材マネジメントに取り入れる動きも見られます。どのような時にBiasが生じるのか、対処しなければならないBiasと放置しておいてもよいBiasの違いなど、Biasに関する正しい理解を得ることが、多様性の受容とイノベーションの促進、リーガルリスクの低減、健全な意思決定に繋がると考えられています。
人事の経営参加については、日本でも言われるようになってきている「HRBP(ビジネスパートナー人事)」という概念も重要であり、今回のSHRM大会の中でも多く取り上げられていました。
日本のコンテクストから言うと、ビジネスリーダーと共に動くBP(ビジネスパートナー)という理解が一般的になっていますが、社員に寄り沿って、社員個々の強みや悩みを理解しながらその力をしっかりと引き出せるBPの重要性がこれからは増してくるでしょう。それが、人材が高いエンゲージメントを持ってスムーズに業務を行っていくことに繋がり、今後の経営に大きなインパクトを及ぼしていくと考えられます。
こうしたBPの役割を実現するためのスキルとして、ピープルスキルということが言われていました。これはマネジメントスキルではなく、人事が現場の社員にアプローチするためのスキルです。ピープルアナリティクスも然りです。
ビジネス側面からは、HR Metricsといって、ビジネスと人事の活動を明確な指標をもって連動させることには取り組んできましたが、ピープルアナリティクスは、データを使って人材1人ひとりのパフォーマンする最大限に上げていくスキルになります。
