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第2回 パフォーマンスを重視する組織への変革~ビジネスに貢献するアジャイル人事~
Prudential Assurance Company Singapore Limited
Chief Human Resource Officer (CHRO)Ms. Sheela Parakka
※所属・役職インタビュー当時
2019年7月3日
- HRの役割
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私の職務として、基礎を固めて、会社を将来の成長軌道に乗せることだけではなく、当社で働く人々が、将来自分の仕事がどうなっているかについて今一度考えるように促すことも重要です。この中には、現在と将来に求められる能力の差を検討し、将来の成長に備えることも含まれます。
こういった両面からのアプローチを、うまくコントロールするには従業員のエンゲージメントに働きかけることが必要です。高いエンゲージメントによって、従業員は権限を持って仕事に臨み、考えを広げ、将来にむけて慣習に挑戦し、組織を持続可能な変化へと導くための実務的な役割を果たすようになるのです。
私のチームはさまざまなビジネスファンクションと連携し、人材に関するアジェンダを進めることで、戦略的計画を推進しています。今後の道筋にそって人材戦略を策定するために、常にビジネスを把握しています。
私はCHROとして、アジェンダを共有しながら他の人をリードし、鼓舞し、権限を委譲します。全社的な観点で、人材を通じて組織の成長を推し進めたいと思います。ただし、一人一人のニーズや希望をサポートする際には、常に従業員ファーストの調整的な立場に立ちます。
CHROはリーダーであると同時に、柔軟性を持ち、助言や批判を受け入れる度量を必要とします。また、チームやもっと大きな組織からの意見を活かして業務を遂行しなければなりません。とはいえ、プルデンシャルでは、私(私のCHROとしての役割)だけがそのような管理職としての能力を発揮しているわけではありません。当社の人事プロであれば誰でも、ビジネスのニーズについて会社に提言したり対応したりする能力があり、その権限も与えられています。また彼(彼女)らがやっていることは他のあらゆる上級幹部の仕事とも変わりがありません。
- Sheela Parakkalの経歴
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私は大学でビジネスと会計の学士号を取り、プライスウォーターハウスクーパースで監査人としてキャリアをスタートしました。また、このキャリアの延長としてBanking&Financeの分野でMBAを取得しました。2003年に人事職に転身し、現在人事としてのキャリア16年目を迎えました。
プライスウォーターハウスクーパースでの経験は、人事を経営面から考えるのに役立っています。ビジネスの複雑さを知り尽くしているとまでは言いませんが、ビジネスを理解したいと思っています。そのことにより、経営者目線で、企業を成功に導く要因について考えたりできるようにもなるからです。私は自分の仕事のこういう点が好きです。以前は、電卓を持ち歩く人事担当者は私だけだと同僚に冗談を言ったものです。
私は人と一緒に働くのが得意です。そのため、人材開発という分野に一番興味があります。もしCHROではなくいち担当者に今からなれるとすれば、ビジネスパートナーになるか、人材開発と文化に携わるでしょう。私は前の会社で自らのチームの組織開発で実績を上げたことから、人事の仕事のオファーを受けました。監査人から人事のプロになるハードルは高かったのですが、実績を積む努力をしました。
- 質問:あなたは経営と人事の両方の経験をお持ちですが、ほとんどの人事担当者には経営側に立った経験がありません。チームのメンバーにどうやってビジネスについて学んでもらうのですか?
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まず私は同じタイプの人材は採らないのです。人事のプロだけを採用することはありません。
第一に、ダイバーシティはあらゆるチームにおいて重要です。ダイバーシティがあることで、さまざまな創造的アイデアを根付かせることができます。第二に、私の人事チームでは常にビジネスユニットとタッグを組みます。こうしてチームがビジネスのニーズを理解できるようにしています。こうした仕事では部外と交流することが必要ですし、そのことは当社の権限移譲という価値観にもとてもよく合っています。ビジネスユニットが私と連絡をつける必要は、必ずしもありません。人事チームのメンバーはさまざまな経験を有していますので、ビジネスユニットは私のチームのリーダーたちから直接アドバイスを得ることもできます。第三に、ビジネスの知識と洞察はチーム内でもさまざまです。私たちは経営の観点から、マクロレベルで起きていることを共有するよう努めています。より重要なことは、それが人事としてのキャパシティにとって何を意味するかです。私はこれを人事部門全体で毎月討議できるように、ビジネスの現場で起きていることを共有しています。
チームの中には、ビジネスユニットまたは各地の事業所への出向を通して、学ぶ機会を得るメンバーもいます。企業文化担当のトップ(Head of Culture)は、一時期、香港の事業所に勤務していました。人事部門の最も重要な責務は、組織を横断して企業文化をまとめることです。私たちの仕事仲間は出身や背景もさまざまで、それぞれ異なる経験を積んでおり、そのほかにもいろいろな相違点があります。こうしたことから、不慣れな環境で働ける能力と、そうした経験をプルデンシャル・シンガポールで共有することは非常に重要です。
- 質問:従業員のほとんどは、人事にプロとしての解決策を示してくれるよう期待するものです。マネジメントが抱える課題にアプローチする時、人事として最も重要な要素とは何ですか?
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仕事の未来を考えるには、新しい人員モデル、新しい働き方、新しい個人の信条と価値体系の進化を念頭に置かなければなりません。ですから、人事ファンクションは機敏に変化し、組織を戦略的に支える存在でなければなりません。プルデンシャルでは定年の撤廃などの戦略的な分野を通じてこれを実現し、新世代の人材を呼び込み、仕事を再設計しています。
仕事の未来をうまく考えるには、アジャイルな考え方を実践する必要があります。つまり、率先して変化とともに成長し、学習を継続する意欲を持ち、新しいテクノロジーを学び、取り入れていかなければなりません。人事のプロも、自身の学びと足りない能力を自覚する勇気と、さらにはスキルアップに投資する意欲と適性を持つべきでしょう。キャリアの方向性、つまりどこへ、どうやってたどり着くのかを明確にしなければならないのです。
アジリティの4つの側面
アジリティには、仕事の未来で重要になる、次の4つの側面があります:
- 学びのアジリティ – 複雑な事柄を把握する能力、直観的であること、問題またはあいまいな事柄に強い好奇心をもって楽しんで取り組むこと。
- 人事のアジリティ – さまざまな人間関係を横断して多様なスタイルやリーダーシップに対応し、人を動かして物事を成し遂げる能力。
- 変化のアジリティ – 可能性を探る能力、未来志向であること、アイデアを実現すること。
- 結果のアジリティ – 複雑で困難な状況でパワーを発揮する能力。結果と卓越性の実現を目指した、やや背伸びした目標を克服または達成すること。
とはいえ、未来においても変わらないもの、重要であり続けるものもあります。
これからのリーダーは、部下の中にある「変化」のマインドを引き出し続けなければなりません。イノベーションを活用してリードする、目の前の仕事を遂行する意味を知ることにより、目的意識を持たせてやる気を引き出す、変化へと導くといった方法でこれを実現します。また、リーダーは、相手の身になって人を導かなければなりません。話に熱心に耳を傾け、部下がスキルおよび能力の獲得を通じて各自のポテンシャルをフルに発揮し最高の自分自身へと成長することに、誠心誠意取り組むことが必要です。
従業員はそれぞれの価値観と大切にしているもの(「自分の羅針盤」)を指針とし、最終的には自分の仕事に強い目的意識を持たなければならないのです。
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