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HR Leaders NEXTウェビナー第5弾では、オンラインによる新入社員オンボーディングの事例として、アスクル株式会社の取組みをご紹介しました。 

「リモート下で新入社員の安心感と主体的な行動を育むアスクルのオンボーディング」
多田 双葉 様 アスクル株式会社 人事総務本部 人事

お客様のために進化するというDNAを創業当時から脈々と受け継いでいるアスクルでは、常に、社員ひとり一人が、自身の知恵やスキルを用いて、社会のため、お客様のためにできることを主体的に考え、行動して、新しい価値を生み出していくことが求められています。その第一歩を踏み出す新入社員研修は、以下の2軸で組み立てられています。
① 新卒ならではの武器を持たせて配属させること 
② 新卒主体で会社を動かすような機会を作ること

「①新卒ならではの武器」というのは、配属後、それをもって、先輩方を引っ張っていけるようなスキル・知識です。前年までは、データ分析スキルにフォーカスしていましたが、今年度は「リモートワークの先駆者」をメッセージとして掲げました。これによって、新入社員は、在宅での新入社員研修をネガティブに捉えるのではなく、「最初からテレワークだからこそ、リモートで業務効率を上げる役割を担えるかもしれない!」という気持ちの切り替えができました。結果、テレワークの手引きや、オンラインツールの使い方動画など、先輩社員へのレクチャーコンテンツの作成・配信などを自発的に企画・発信する成果を生み出しました。社内のITチームとの連携が必要なプロセスでは、自分たちがやりたいことを、社内の関係者を巻き込んで実現していくことも習得しました。

アスクルの採用では「自ら変化を創り出す人材」をテーマにしています。新入社員研修では、彼(女)らがもつ素養を信頼して、のびのびと活動してもらい、一人ひとりが全体の中に埋もれてしまわなように、人事が良く目を配ることを心掛けています。加えて、一旦社会に出ると、学生時代とは違い、答えのない課題に常に直面するため、簡単に答えを与えない、人事が答えを持っているという印象を与えないようにも意識しています。

 2020年4月~6月まで、オンラインで開催した新入社員研修の中でも、特に新入社員がのびのびと主体的に動けるように実施した、3つのプログラムをご紹介します。

1つ目は会計思考です。経営陣より「商売人マインド」を醸成して欲しいというアドバイスがあり、取り入れたプログラムです。有価証券報告書の分析や模擬投資のワークなど用いた実践的なプログラムです。管理会計で用いる単語や計算式の意味を説明する講義は行いませんでした。ネットで調べればすぐにわかりますし、新入社員同士で学び合うこともできるからです。ワークにあたっては学びの目的・意図のみを伝えることを心掛けました。

会計思考に加えて、デザイン思考のインプットも今年度から行っています。ユーザー視点で物事を考える点で、アスクルの「お客様のために進化する」というDNAにフィットしています。また、新入社員の中には総合職とエンジニア職が混在しており、職種を超えて多様なアイデアを創出することを後押しする効果も期待して導入したものです。内容としては、1つのテーマ(課題)に対して、How Might We~(どうしたら私たちは~が出来そうか)という問いを立ててチームで議論をしてもらいました。時に、考え過ぎて、私たちは何のためにこの議論をやっているのか?といったようなモヤモヤ感に直面している場面も見られましたが、それも乗り越えながら、皆で徹底的に議論して、自分たちなりのソリューションを導き出すことができていました。

以上の会計思考とデザイン思考で得たインプットを、アウトプットとして形にしていくのがフィールドワーク研修です。テーマとして「コロナで変わる社会に対して変化の兆しを見つけ、アスクルとして出来ることを探る」を設定しました。この大きなテーマから、新入社員本人たちの関心事をもとにグルーピングを行い、外出制限が緩和されたタイミングで、スーパーや商店街に観察に行ったり、文献を調べたり、社会全体を大きなフィールドとして活動しました。

講義スタイルの研修では、社会人としての基本マナーや知識をコンセプトから学びますが、こうしたプロジェクト型の研修では、実際の行動を通して身に付けることができます。そこで人事が、例えば「いま、PDCA出来ていたよ」と肯定することで、自信を持てるように支援します。主体的なワークに、新入社員として学ぶべきマナーや知識を結び付け、そして振り返った時にいつの間にかできていたと思えるような機会をたくさん作る、あるいはそう思えるヒントをあちらこちらに意図的に散りばめておくことが、人事の役割だと考えています。 

リモート下において、人事として特に留意したこともあります。在宅続きで寂しい思いをさせないように、「繋がり」を伝え続けたことです。そのため、1日のスケジュールの中で、学習・ワーク以外で、自分自身のことを話せる機会をなるべく多く設定しました。まず、人事部員総出で、最初の1ヶ月間は新入社員一人あたり毎日15分ずつ1 on 1ミーティングを実施しました。リモート下で「ここに入社した」という実感を持つために、社内のいろいろな人の目に触れることが大事であると考え、担当制ではなく、毎日担当が変わる1 on 1のスタイルを採りました。

同期同士の雑談も必要です。唯一の約束事はよく聞いて、よく話すことだけ。リモートの会話では必要最低限の情報伝達に留まりがちで、話が脱線しにくくなります。研修の途中から雑談の時間を敢えて確保するようにしました。また、新入社員は日報を書きますが、それに対して人事がフィードバックをするだけではなく、同期からも、1日4-5名を目安にフィードバックを受ける時間を設定しました。仲間の日報をしっかり読み、適切なフィードバックをすることは、お互いに認知していることを伝え合う意味で、とても大切な時間です。日報のフィードバックタイムだけではなく、研修の節目では、とにかくお互いを褒める“ほめほめタイム”を設定しました。このワークのルールとしては、褒められた時に謙遜するのではなくて、「ありがとう」としっかりと受け取ることです。いろいろなメンバーがいる中で、相手の良いところを見て関係を構築できるようになりました。

最後に配属先の職場育成担当への引継ぎについてです。まず、育成担当者にはオリエンテーションを行います。今年度そこでお伝えした内容は、リモートと出社の場合のコミュニケーションの違いについてです。それは、新入社員たちが、フィールドワーク研修のときに考え・まとめたものです。また、毎年行っていることですが、「人柄共有」も実施しています。各配属先部門の育成担当、トレーナーとの面談で、30分くらいを使って、配属する新入社員の特性やこれからの育成ポイントなどを人事から伝えています。

アスクルの新入社員研修は、その期間で、何かを詰め込むというものではありません。今後の社会人生活で踏ん張らないといけない場面がたくさんあると思います。その時に「あの時、あんなに一生懸命頑張れたんだから」と思い出せる経験が、1つでも新入社員研修期間にできればと考えています。人事は、そんな彼(女)らの原動力を創ることを全面的に支援しています。

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